【出演者座談会】九鬼そねみ×御厨亮×石原慎也×丹羽菜緒×杉原邦生

M☆3『かえりのかい』出演者座談会
九鬼そねみ×御厨亮×石原慎也×丹羽菜緒×杉原邦生

『かえりのかい』創作も大詰めの稽古場からお届けする座談会の第3回目は、九鬼そねみさん[努力クラブ]、御厨亮さん[GERO]、石原慎也さん、丹羽菜緒さん(新人)の4人にご登場いただきます(九鬼さんはインフルエンザで療養中のため、Skypeでご参加いただきました)。九鬼さん・御厨さんは杉原邦生演出作品に初参加、石原さんは2回目の参加です。ちなみに新人女優の丹羽さんは、何やら杉原演出作品と「ある縁」がある模様……。
最終回となる今回は、演出・美術を担当する杉原邦生を交えて、稽古の感想やM☆3という団体のこと、さらには杉原の学生時代までを語り合います!

※写真は九鬼さんの復帰後に撮影されたものです

  キャストの選抜理由、M☆3の特徴

杉原 今日は5人で座談会ということで、皆さんに僕への質問を考えてきてもらってます。
一同 よろしくお願いします。
杉原 (順番は)若い人からにしようか。ピーチ(石原)が一番若いの?
石原 僕は(丹羽さんと)同い年です。
丹羽 4月11日生まれです。
石原 4月30日です(笑)。
杉原 じゃあ丹羽さんから行きましょう。
丹羽 あの、キャストの選抜理由みたいなことを知りたいです。
杉原 あ、それは聞きたいよね(笑)。そもそもM☆3の公演は6年ぶりなんだけど、昔は大学(京都造形芸術大学)の同級生や後輩とやってたの。でも、今では演劇をやめてる人もいれば、ぜんぜん連絡を取ってない人もいて。なんとかもう1回集めてもよかったんだけど、僕も最近は、京都で稽古して公演することがあんまりないから。だったら京都で活躍している若手劇団とか、俳優たちと一緒にやりたいと思って。
御厨 なるほど。
杉原 この4人に関して言うと、まずミック(御厨)は舞台で何回も観てるでしょ。それで、何よりもビジュアルがおかしいと思ってた。
御厨 はっはっはっはっは。
杉原 なんだろう……筒。
御厨 筒?(笑)
杉原 太い筒みたいな、ヌボーっとしたビジュアルが先にあって。声や演技よりも、動きを含めたビジュアルの印象がね。キャストを考える時に、合田くんみたいなデカい人がいて、細い男もいるから、その中間がいたら面白いなと思って。それでね、九鬼さんは……九鬼さん、聞いてる?
九鬼(Skype) ……聞いてます、聞いてます。
一同 (笑)
杉原 Skypeだと顔が見えないから(笑)。九鬼さんは努力クラブを観た時も印象に残ったけど、『赤色エレジー』(Quiet.Quiet / 2012年)の時に「やっぱヘンだな」と思って。背後霊とか、座敷わらしみたいな質感で存在できるのっていいなと思ってたの。
御厨 すごくわかる気がする……。
杉原 僕が努力クラブ観たの、けっこう前だよね。
九鬼(Skype) そうですね。2012年とか、2013年とか。
杉原 あとM☆3って、もちろん演劇に深く関わってる人も必要だけど、いろんなタイプの人間が集まってて、そこには「なんでこんな人が舞台に出ちゃったんだろう」みたいな人もいてほしい。まあ、今回は丹羽さんなんだけど(笑)。今までにも、ホームレスの人にお願いして、舞台に出てもらったりして(※2006年「THE KING OF DANCERS 2006」)。
御厨 えっ、本物の?
杉原 本物のホームレス。もちろん丹羽さんはホームレスじゃないけど(笑)。ブルーバードも、出演する人を俳優っていう枠組みだけで考えない。いわゆる“外れた人たち”の存在が、M☆3の破滅的・破壊的な作風に必要だと思うし。それに、そういう人がいると、演劇っていうもののカテゴライズが揺らぐでしょ。
石原 カテゴライズ?
杉原 M☆3は「演劇・イベントユニット」だから、何かが起きてしまったような、事件性みたいなものを大切にしてて、そこが演出してても面白いところだから。丹羽さんが出るのも、「(新人)」って付いてる、誰も知らない女優が出てしまうハプニングっていうか(笑)。
丹羽 (笑)

『こいのいたみ~come on! ITAMI~』(2011年)photo by Toshihiro Shimizu

杉原 丹羽さんは造形大の教え子なの。僕が担当してた授業発表公演(2012年『ハムレット』)に出てて……
丹羽 本業は宣伝美術です。
御厨 え、宣伝美術だったんですね(笑)。
杉原 でも本番直前に出演者が足りなくなった時に、「丹羽さん、出る?セリフないし」って聞いたら、「出ます!」って。だから出てもらったんだけど、その時すごくニコニコしてやってくれて、ああ、絶対出たくないっていうタイプじゃないんだと思って。もしや今回も出てくれるかも……と思って連絡したら、「出ます!」って二つ返事だった。
丹羽 一応、演劇やってる友達に相談したら、「面白いじゃん」って言われて。
杉原 あ、一応相談したんだ(笑)。
丹羽 はい(笑)。
杉原 あと、ピーチ(石原)も2010年の『文化祭 in KYOTO』っていう一般公募の作品に出てくれて。不器用なんだけど、だからこそ俳優にはできない間合いとか、身体の動きが面白かった。
御厨 そういうところ、本当にありますよね。
杉原 それは上手いとか下手とかじゃないから。僕は、「プロの俳優が出てないものは演劇じゃない」とは思ってなくて、むしろ(作品は)風通しのいいものであってほしい。作品をつくる時に、毎回そういう人を出したいとは思わないけど、M☆3ではそれが許されるし、必要だし、そういうことがしたくて。
御厨 まさに稽古場でも、風通しの良さを感じてます。全然種類の違う人たちばかりで、みんな個性もあるし、それぞれが現場を楽しんでる感じもして。
杉原 いろんな人がいた方が、やってて面白いんだよね。それが世界じゃん!みたいな(笑)。丹羽さんは、オファーされた時どう思ったの?
丹羽 いや……すごいこと言ってくるなと思って。
一同 (爆笑)
丹羽 私を女優として扱うのは邦生さんだけ(笑)。今までも「次の出演舞台はいつなの?」ってよく聞かれて、「いや、出ないです」みたいな。
御厨 そんな聞き方してたんですね(笑)。
杉原 会うたびに聞いてたのよ。『ハムレット』に出たんだから、当たり前のように。
御厨 (丹羽さんに)実際、稽古場はどんな感じですか?
丹羽 いや……なんか、すごい所に来てしまったと……。
一同 (笑)
丹羽 私は稽古に遅れて参加した(注:丹羽さんは稽古初日にインフルエンザが発覚し、稽古6日目からの参加となった)んですけど、稽古場の扉を開けた瞬間に思わず閉めちゃって。……帰りたいって(笑)。
石原 うん、わかる。稽古初日はメチャクチャ緊張した。
杉原 でもね、稽古初日はみんな緊張してたよ。
御厨 メチャクチャ緊張しましたよ。知り合いもたくさんいるけど、ここまでゴチャゴチャな感じは久しぶりで、台本もどんな感じか予想できなかったし、しかも邦生さんが演出っていう、想像がつかないままの初日だったんで。
九鬼(Skype) 私も緊張しましたよ。たぶん私、邦生さんと喋ったことなかったはずで。
杉原 メールだけだよね。
九鬼(Skype) でも初日に、邦生さんが「みんなと喋ったことがあるのは僕だけ」って言ってて。あれ!?認知の歪(ひずみ)が起きている!?って。
一同 (笑)
九鬼(Skype) でも、もし私が忘れてたとしたら失礼すぎますし、
杉原 いや、ごめん。喋ったことはないと思う(笑)。

※写真は九鬼さんの復帰後に撮影されたものです

  杉原邦生の学生時代

御厨 じゃあ、ピーチくんからの質問。
石原 邦生さんにとって、恩師と言える方のことをお聞きしたいです。
杉原 演劇人生の恩師っていうと……僕は大学時代、3人のアーティストに天狗にさせてもらったと思ってて。1人目は、大学の先生だった太田省吾さん。僕の初演出作品を観てもらったとき、太田さんがボソッと「君の演出が良かった」って。
一同 へー。
杉原 で、2人目は島次郎さん。集中講義で、自分のイメージする町を画用紙に描く課題があって。その時に提出した絵を、島さんが「アトリエに飾りたいから、ちょうだい」って。しばらく本当に飾ってくれてたみたい。
御厨 それ、絵を買うみたいな感覚ですよね。
杉原 ほんとだよね。3人目は市川猿之助さん、当時の亀治郎さんね。春秋座で「亀治郎の会」をやった時、当時は映像の編集もできたから、僕がCMを作ったの。そしたら「カッコいい、面白い」って言ってくれて。この3人に褒められたから、絶対イケるって思った。単純だよね(笑)。もちろん現実はそんなに甘くなかったけど、早くに天狗になったから、早くに鼻も折られたというか、それが逆に良かった。本当に感謝と尊敬しかない、お三方には。そんな感じかな。
石原 ……ありがとうございます。
一同 (笑)
杉原 じゃ、次はミックの質問!
御厨 真面目な質問ですけど、最初は舞台美術家になりたかったとお聞きしたんですが、演出家になろうと思ったきっかけはあるんですか?
杉原 うん、最初は舞台美術家になりたくて大学に入った。学生時代、先生から「いろんな舞台をいい席で観ろ」って言われたの。客席の、前後左右ど真ん中でね。で、当時は年間100本観るって決めてたんだけど、そうやって観てたら、舞台美術と俳優の動き、照明、音響とかが合ってないって思う作品にかなり遭遇して。「なんでこうなっちゃうんだ、もったいないな」と思って、そういうことを美術家として全部指定したいと思った(笑)。
御厨 ん?
杉原 でも、それ美術家じゃねーな、演出家だなって(笑)。
御厨 そうですよね(笑)。
杉原 あと、その頃授業で映像で観た、蜷川幸雄さん演出の『王女メディア』が超ショッキングで。だって、僕が持ってたギリシャ神話のイメージとまったく違って、いきなり男たちが津軽三味線弾きながら出てくるし、みんな(辻村)寿三郎さんのデコラティブな衣裳着てるし、メディアは男性が白塗りでやってて。演出ってこんなに自由なんだ、超楽しそうって(笑)。
一同 (笑)
杉原 だから、美術もやる演出家になろうと思ったの。
御厨 その流れで、KUNIOや木ノ下歌舞伎よりも先にM☆3を始めたんですよね?
杉原 実はその前にteutoっていう団体があって、そこでは当時流行ってた前衛的なパフォーマンスをやってたんだけど。でも「もっと下らないことをやりたい」っていう反動があって、それで出来たのがM☆3。その後、自分の団体を持ちたくてKUNIOが出来て、木ノ下(裕一)くんが木ノ下歌舞伎を立ち上げて。だから、一時期は4つやってた。
御厨 おっそろしい……。人格が4つあるじゃないですか。
一同 (笑)

  稽古の現状、そしてこれまでの感想

杉原 じゃあ、九鬼さんからの質問。
九鬼(Skype) ……今、稽古場はどんな感じですか?
一同 (爆笑)
杉原 え、それを僕に聞くの?(笑)えっと、まだ台本が全部来てないです。
九鬼(Skype) え、おっ、
杉原 僕としては、だいたい芝居を作ってると、飽きる瞬間が訪れるんだけど、そこからが勝負で。2,3日前からはそんな感じかな。
御厨 そうですね、前半の稽古を繰り返してて。九鬼さんが……その、インフルで倒れてから(笑)。でも、ここにきて演出がゴリゴリ入ってきて、一歩進んだような感じがしてます。
杉原 稽古で見てて飽きるってことは、作品としてダメだと思うの。よく出来てるものは何回観ても飽きないし。それが強度のある作品、いい作品だと思う。だから自分が飽き始めてるって気づいたら、それが自分へのサイン。どうすれば飽きないものになるのか、面白くなるのかっていう。

『かえりのかい』稽古風景

杉原 皆さんは、稽古しててどうですか?
一同 …………
杉原 …………(丹羽さんを見ている)
丹羽 …………
一同 (笑)
御厨 今、丹羽さんに振ってるんですよ!
杉原 どうですか、新人女優として。
丹羽 いい意味なんですけど、家に帰ると、なんかすごく疲れたなって思って。でも、今日は何やったかなって思ったら、別に大したことしてないな……って(笑)。
一同 (爆笑)
丹羽 ふふ、明日も疲れるんだろうな。
杉原 それ、稽古の感想じゃなくて、丹羽さんの状態だよね(笑)。
丹羽 わかんないことはいっぱい出てくるけど、後から納得できるというか。でも、ハテナばっかり出てくるから疲れるんだろうな。クエスチョンマーク、毎日いっぱいです。
杉原 はっはっは。
御厨 僕の感想をザックリ言うと「細かい!」。邦生さんは全体を見てるはずなのに、人それぞれの細かい所もメチャクチャ見てて、「え、そこ見てんの?マジで?」ってドキッとする瞬間がある。常に客観的な視点で見てると同時に、すごく主観的にも見てる、ズームの切り替えが速い人なんだなって……これ、すごく上手に言えたと思う(笑)。
一同 (笑)
御厨 それに細かく言って下さるけど、もちろん優しさもちゃんとあるので。
一同 うん、うん。
御厨 最初は怖いと思ってたんですけど、
杉原 そうらしいよ(笑)。これ、けっこうみんなに言われるの。
御厨 九鬼さん、邦生さんのこと怖かったよね?
九鬼(Skype) 怖かったです、怖かったです。
杉原 ウソでしょ? なんで、なんで?
九鬼(Skype) 「九鬼さーん!」って名前を呼ばれるのも怖かった。
御厨 「九鬼さーん!」って呼ばれると、九鬼さんは「はいっっ!!」ってなってる。肩が一回グッと上がって、完全に怒られてる人の感じですよ。
九鬼(Skype) でも、その後、演出の言葉が面白くてほっとします。
御厨 邦生さんの言葉って、いい意味で裏がないというか、言葉の通りに伝えてくれる。毒の出し方が、残るような感じじゃなくて、パーンって出てくるというか。
杉原 ウソついたり、取り繕ったりすると、稽古場にムダな時間が増えちゃうから。だから、失敗したら「ごめん」って言うし、演出が決まってないと「ちょっと保留」って言う。濁したり、裏ありそうにしちゃうと、いろんな憶測が生まれるでしょ。その時間がムダ。そうすることが俳優との信頼関係につながると思うしね。

※写真は九鬼さんの復帰後に撮影されたものです

  作品のみどころ

杉原 それじゃあ、最後にこの作品の見どころを。
九鬼(Skype) 私、学校行ってないんですよ。だから、なんか学校モノに複雑な感情があって。でも、みんながみんな、学校にいい思い出ばっかり持ってるわけじゃないと思うし。きっと、学校のイヤな感じをいっぱい観られると思うので、楽しみにしてほしいです。
石原 僕の場合、まだ自分の役が台本に出てきてないので(笑)。
一同 (爆笑)
石原 でも観る人が、自分の感想を自信をもって発信していいと思ってて。いろんな立ち位置の人物が登場して、いろんな演出があるけど、「この作品ではこう思ってほしい」って、こだわりのラーメン屋の店主みたいに押し付けない……わかりにくい例えですけど、
一同 (笑)
杉原 あー、でも、確かに押し付けるのは嫌なんだよね。
石原 受け手が自由に感想を持ってくれたら、そのひとつひとつが真実だと思うので、どう受け取ってもいい、どう楽しんでもいい、とにかく楽しんでほしいです。
丹羽 あの、私は、もし客席で観てたら、うっかり泣いちゃうと思うんですよ。
一同 ええー。
丹羽 やっぱ、ハンカチが要ると思うんですよね。
杉原 え、ほんと?
丹羽 はい。
杉原 ………………どこで?(笑)
一同 (爆笑)
杉原 僕はわかんない(笑)。他の作品だと「ここは泣く人いるかもな」って思いながら作ることもあるんだけどさ…………どこで!?
一同 (笑)
御厨 僕としては、シンプルに、いろんな個性を持った俳優さんがいて、誰一人欠かせない存在感があるので、誰を見ても飽きないと思うんです。あと、邦生さんが空間づくりをしてるのを見てたら、こんなに魑魅魍魎が集まって、話もキツい感じなのに、最終的には優しい気持ちで帰れるんじゃないかと思いましたね。小学校の話だったり、立誠小学校という場所だったりを含めて、「こういうヤツいたよな」とか、そんな気持ちで帰ってもらえるんじゃないかと。
杉原 劇場で稽古してて、ふと、すごく贅沢な公演かもしれないと思ったんだよね。こういう作品を実際に使われていた教室でやることの、空間性や場所性もそうだし、主に関西で活躍してる人たちがごった煮で出てるのもそう。この空間で、このキャストで、この芝居を観られるのは二度とないかもしれない。まず、こんなキャスティングは誰もやらない。そもそも丹羽さんを舞台に上げようと思う人が僕しかいない(笑)。
一同 (笑)
杉原 M☆3は団体の知名度が低いですが(笑)、僕には作品に一番も二番もなくて、たとえ数千人入る公演でも、今回みたいに数百人で満杯になる公演でも、作品への熱量はまったく変わんない。僕自身、きっと数年後にも改めて「やってよかったな」って思うだろうし、続けて観てくれているお客さんにも、きっと「アレがココに繋がったのか」って思ってもらえるものになるはず。6年ぶりに、いろんな偶然が重なって実現したけど、すげー大切な公演だと思ってる。いろんな人に観てほしい。KUNIOや木ノ下歌舞伎のファンは「いつもと違う!」って怒って帰るかもしれないけど(笑)。
一同 (笑)
杉原 でも、これも杉原邦生だし、これが杉原邦生だから。じゃあ最後に、九鬼さん、言い残したことない?
九鬼(Skype) もうインフルエンザの人が出ませんように。
一同 (爆笑)
杉原 それが一番だよね。
九鬼(Skype) ほんとに。

 

編集|稲垣貴俊

 

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