【出演者座談会】金子仁司×熊川ふみ×緑川史絵×森田真和

M☆3『かえりのかい』出演者座談会
金子仁司×熊川ふみ×緑川史絵×森田真和

本番間近となった『かえりのかい』の稽古場から、出演者の皆さんに、稽古の感想やM☆3の印象、意気込みなどをお聞きする座談会の第2回をお届けします。
今回ご登場いただくのは、金子仁司さん[維新派]、熊川ふみさん[範宙遊泳]、緑川史絵さん[青年団]、森田真和さん[劇団森田真和]。杉原邦生の演出作品に何度もご出演されている皆さんですが、金子さん以外はM☆3初登場。これまでに経験した杉原演出の現場とはどう違う? 今回の作品はどうなりそう? などなど、隅々まで語っていただきました。

  これまでの稽古の感想

緑川 笑いが絶えない稽古場ですよ。
熊川 ほんとにそう。
森田 今までに参加させてもらった、杉原邦生の演出作品とは、やっぱり毛色や雰囲気が違ってて。M☆3独特の空気が色濃いというか。
金子 僕は科白(セリフ)劇そのものが前回のM☆3公演(2011年『こいのいたみ~come on! ITAMI〜』)以来6年ぶりなので、単純に難しいです。邦生さんの芝居だからじゃなくて、セリフを言うのがそもそも難しい(笑)。一周回って新鮮だし、邦生さんの演出も面白いので、(現場では)ヒリヒリしてます。
森田 ふだん邦生くんは、古典とか悲劇とか、いわゆるふざけ所の少ない戯曲を演出することが多くて。そういう作品の時、邦生くんは「ふざけたい、ふざけたい」って言うんですけど、今回は逆にふざけ続けてる。もちろん真面目なんですけど、終始ふざけてるので、それはそれで大変ですね。単純に体力が要るし。
熊川 真面目にやり続けるのと、ふざけ続けるのって同じですよね。ひとつ掛け違うと全部が狂ってゆく怖さもあるし。
金子 ふざけてるけど、非常に真面目というか。
森田 そうそう。すごく真面目に、全力でやらないとふざけられない。
熊川 ディスコミュニケーションもコミュニケーションだ、ってことをお互いにわかってないと出来ない。
緑川 稽古終わりにはグッタリしてて、ふざけるのってこんなに疲れるんだって思った。
熊川 それに今日、初めて(本編の)半分くらいを通してやったら、こんなにうまくいかないんだって……。
森田 小分けにやったら成立することも、通してやったらテンションが違ったりしてね。

  過去に参加した杉原邦生演出作品との違い

緑川熊川 うーーーん。
緑川 違うんですけど、どこか一緒って感じかなあ。……なんて言えばいいんだろう? (熊川に)先にしゃべって(笑)。
熊川 えっ。えっ?
森田 はっはっは。
熊川 ……なんでしょうね。オファーの際にも言われましたし、宣伝でも「暴れます、大暴れします」って言葉がさんざん出てるので、フィジカルなものをイメージしてたんですけど、いざ稽古に入ってみると、いやいや、非常に緻密な会話劇だぞと(笑)。
一同 (笑)
熊川 ものすごくストイックに作るんだってことがよくわかって、おののいてます。
緑川 (過去に出演した)木ノ下歌舞伎と今回では、もちろんお話はまったく違うんですけど、邦生さんの細かさは一貫してて。細かく積み重ねるのは一緒だと思います。
熊川 うん、むしろ今回が一番濃密なんじゃないかって思うくらい。
緑川 積み上げて、積み上げて、の繰り返し。
熊川 一番難しいかもしれない。もちろん今までのものも、とても緻密だったけど。
金子 僕は邦生さんのお芝居を最近観てないんですけど、真面目な作品だとどんな感じなんですか? ふざけるために『ハムレット』をやるんじゃなくて?
森田 いやいや、きっちり真面目な一本筋を通して、ふざける要素はそこにちょっと入ってるくらい。ストイックに作ってる。
熊川 そう、ストイックだし、ストレートだし。
緑川 ……(森田に)でも不真面目担当でしたよね?
森田 僕はだいたい不真面目担当だから(笑)。邦生くんは、「ふざけたい、ふざけたい」っていうフラストレーションを僕で発散してる(笑)。よく今までM☆3に出てこなかったなっていうくらい。
一同 (笑)

  台本を読んだ感想

金子 こいつらは何をやってんだ、何をグダグダ喋ってるんだ、っていう。
緑川 何も起きてない(笑)。
熊川 怒ってるか、怒られてるかのどっちか。でも全然ムチャクチャじゃないし、しっかり会話してる印象です。
一同 うん、うん。
金子 (ブルーバードの台本は)昔からわりとグダグダ喋る感じで、話が進まないのが醍醐味というか。でも今回はさらに話が進まない。密室劇ですしね。
一同 (笑)
緑川 密室劇……確かに。
金子 あえて深く解釈するなら、国会みたいな、最高権力の、一番崇高とされる議論の場と同じように考えたらいいかと思ってます。さっきも同じ質問したとか、聞いてる・聞いてないで揉めたりとか。
熊川 同じですもんね、話が全然進まないし。重箱の隅をつつき合ったりして。
金子 しかし、それにしても大人がやるわけだから。学校で、机の前にどんな風に座るのかとか、違和感はないのかとか、そこから確認しないといけなくて。腕を組んで座るのか、机に手を置くのか、どれだけ背中が曲がってるのかとか……身体のあり方から、どうするべきか発見しようと思ってます。
緑川 特に、誰かのセリフを聞いてる時は大変ですよね。

  M☆3という団体について

熊川 (過去公演を)映像で観たんですけど……わからなかった……。
一同 (笑)
金子 まあ、映像で観てもね。
熊川 そう、空間にいないとわからないから、これは参考にならないなって思っちゃった。でも、直感的に不安にはなりましたね(笑)。
緑川 私はまったく知識ゼロ、邦生さんしか知らない状態で。でもオファーの時に、邦生さんが「最近はずっと真面目なやつをやってきたから、今回はふざけたい」って言ってて、そのメンバーに入れてもらえるのはうれしかった。
森田 僕は1回だけ、『こいのいたみ』を観てると思う。でも6年かけて記憶が削られてるから、今ではカオスだったってことしか残ってない。M☆3=カオス。
金子 そもそもタイトルが「come on! ITAMI」で「こいのいたみ」ってね……。
緑川 え、ダジャレじゃないですか。
熊川 そういう意味だったんだ、知らなかった。くっだらねー(笑)。

『こいのいたみ~come on! ITAMI~』(2011年)photo by Toshihiro Shimizu

緑川 金子さんはM☆3にどうして出ることになったんですか? 最初のきっかけは。
金子 ……そこにいたから? 大学が一緒(京都造形芸術大学)で、KUNIOの旗揚げ公演『ペリカン家の人々』(2004年)に出させてもらって、邦生さんの卒業制作に出て、M☆3に誘われて。
一同 へえー。
緑川 メチャクチャ付き合い長いんですね。
金子 大学時代から十数年。今回は久々だから、逆にフレッシュ。久々すぎて、フレッシュとしか言えない(笑)。
緑川 土管の役をやってたんですよね?
金子 いやいや(笑)、ドカーン男っていう、ドカーンって言い続ける役。『バターなリズム♪』(2009年)って作品で。
緑川 それ、何の役なんですか?
金子 ……わかんないです。
一同 (笑)
熊川 未だに?
金子 わかんないですけど、それなりに意味は付けられた。でも爆弾的な役だったので、今回はもうちょっと、
緑川 いや、今回も爆弾ですよ!
熊川 金子さんは存在が爆弾。
緑川 ほんとに、出演者に爆弾しかいないから(笑)。
一同 (爆笑)
緑川 いかに自分がつまんないかって。なんて私はつまらない人間なんだって。
熊川 思う、思う。

『バターなリズム♪』(2009年)photo by Toshihiro Shimizu

森田 いやいや、邦生作品の常連というか、この座談会にいるメンバーは乗りこなすのが上手いですよ。M☆3という難しい船を、お三方とも、よく上手に乗りこなすなって思いますね。
緑川 その実感はまったくない……。
熊川 ヘコんでばっかりで。
森田 めっちゃ面白いですよ。この3人を見てて、面白くなかったことがない(笑)。
金子 持ち上げるなあ……。
熊川 迷いまくってますよ。どういう状態でお芝居するのが正解かなって。もうカタチを作ってもいいかな、って思ってたんですけど、脚本を読み進めると、そうもいかなくて。最後まで読まないと、答えは出ないんじゃないかな……。ひとまずベースを作ったから、これからどうしようかっていう。
金子 あのイヤらしい二人(ブルーバード、杉原)は、振れ幅を楽しもうとするから。振れ幅を作るために、ベースを決めるような感じがしますね。とりあえず作って、それからどうするかは後から考える、みたいな。
熊川 とりあえず何かを決めないと、その次がわからないのは、邦生さんの現場では毎回同じかも。そこから「あっちがあんな感じなら、こっちはこう」って変えていく。
緑川 それにしても邦生さんは、自分の生理とは正反対の演出をしますね。
熊川 え、そうなんだ。
緑川 今回は特にそうで、ぜんぜん楽な方向に行けなくて。こう組み立てれば楽だな……ってこっちが思ってるところに、邦生さんは行かないから。言われたことには乗りますけど、とにかく起伏が激しくて、ジェットコースターみたい。勉強になります。
熊川 そういえば、木ノ下歌舞伎で共演(2013,2015年『三人吉三』)した時に、「緑川すごいな」って思ったことがあって。女郎役だったんですけど、セリフを現代口語にする稽古で、「一重さん、ここに居りんしたか」っていうセリフを「あ、いた」って訳した(笑)。
緑川 たった3文字にしちゃって。
熊川 すげーな青年団、っていうか、緑川すげーなって思った。
緑川 いや、楽な方向に行っちゃうから……。

  公演への意気込み

緑川 一緒に地獄へ落ちるつもりで、頑張ります。
森田 はっはっはっは。
熊川 落ちたくないなー。
緑川 私は地獄を見てみたい。
金子 いいですね、火に焼かれる寸前まで行きたい(笑)。全部さらけ出す、さらけ出されてしまう感じの恥ずかしさを、存分に味わいたいです。
熊川 私は、不安定に始まって、不安定なままで終わりたいです。上演の最初から最後まで、ずっと不安定な状態でいられたら最高だなって。そういう時、すごく恥ずかしいし、油断すると笑っちゃうから。
森田 僕は、そうですね……まだ本番でやる役の稽古をあんまりしてないので……
一同 (笑)
森田 だから、どんな感じで臨んでいいか、ちょっとわかんないですけど。でもM☆3って、僕にとってはすごく贅沢というか。こんな感じのお芝居を、こんな風に稽古できることなんて、きっと次にM☆3に出る時までないだろうし、出られるかどうかわからないし、まずM☆3があるかどうかわかんないし(笑)。二度とないことかもしれないので、存分に楽しみたいと思います。
熊川 宣伝はパンキッシュな感じだけど、実は緻密なことをやってるので。羊羹(ようかん)みたいに密度の高いことを(笑)。
金子 ギュッとしたやつね。ギュッとした羊羹。
森田 まったく喉を通っていかないヤツ(笑)。
熊川 そう、そういう気持ち悪さを感じてほしいですね。

 

編集|稲垣貴俊

 

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