【出演者座談会】稲森明日香×合田団地×長南洸生×松岡咲子

M☆3『かえりのかい』出演者座談会
稲森明日香×合田団地×長南洸生×松岡咲子

いよいよ稽古も折り返しとなった『かえりのかい』の稽古場から、出演者の皆さんに、稽古の感想やM☆3の印象、意気込みなどをお聞きしました。
第1回は稲森明日香さん[夕暮れ社 弱男ユニット]、合田団地さん[努力クラブ]、長南洸生さん[悪い芝居]、松岡咲子さん[ドキドキぼーいず]にご登場いただきます。京都を拠点に活動されている皆さんですが、稲森さん・長南さんは創生劇場『やわらかなかぐら』(2016年11月)以来、杉原邦生演出作品に2回目の登場。合田さん・松岡さんのお二人は初登場です。4人は『かえりのかい』の創作を、どんなふうに受け止めているのでしょうか?

  これまでの稽古の感想

稲森 すごく丁寧、緻密に作ってますよね。それに面白い俳優さんと一緒にやれていて、人が演出を受けてるのを聞いてても面白い。
長南 これだけ笑いが絶えないのも珍しいというか。(杉原)邦生さんの性格かな、すごくサバサバしてるというか、いい意味で割り切りが強いから、やってて気持ちいいし。
松岡 役者に爆弾が多い(笑)。
合田 爆弾?(笑)
松岡 (稽古で)人狼ゲームをやった時にも思いましたけど、人のバランスがかなり良い感じがします。

  台本を読んだ感想

合田 いやー、不気味ですよね。最初の意図がわからないから、「この設定なに?」みたいな。
稲森 私もまだわかってへん。セリフのやり取りを頼りに進んでるだけなので、なんのこっちゃ、まだわかってへんと思います。
合田 いや、僕もほぼ一緒ですね。
長南 稽古場で話題になるのは、新しいページが届いた時に「これ、展開としては進んでるのかな?どうなのかな?」っていう。どこに向かうのか、まだ全然わからなくて。
松岡 でも最初の時点で、私はすごく面白かったです。
長南 面白いですよね。この先がわからなくても、「まあいいか」って思わせてくれるスゴさがあるなって。これからどうなるんだろう、自分はどう振る舞うんだろうって考えますけど、「まあいいか、とりあえず楽しいし」みたいな感じもしてて。(今回の)メンバーの雰囲気もあると思いますけど。
合田 「なんとかならなくてもいいか」って思えるくらい、今楽しい。
長南 そう、そうです。そっちかもしれない。
松岡 私は台本を読んで、かなりドキッとしてしまったというか……。今の社会のことを想起させられたんですよね。たとえば、日本でいう明治時代の教育を今やろうとしてる学校があって、そこの方針をみんなは批判するけど、普通の学校教育もそう変わらないよね、とか。先生が「あれしなさい、これしなさい」って言うと、みんな当たり前に「はい」って言ったりするし、別にやりたくもないのに「かえりのかい」をやったりしてて。かなり深みのある台本で、お客さんもきっと楽しいんじゃないかと思います。
合田 へえー。いろんなことを受け取ってるんやね。
一同 ……。
松岡 すごい空気にしてしまった……。
稲森 いやいや。
合田 そこまで考えてなかった。
長南 僕なんて「まあいいか」って言ってましたからね(笑)。
合田 「なんとかならなくてもいいか」って(笑)。
松岡 どっちの受け取り方でもいい作品になる気がしてます。「まあいいか」っていう人もいれば、「ヤバい」って思う人もいるみたいな。

  「M☆3」という団体について

長南 僕はぜんぜん知らなかったんです。(前回公演の)6年前だと高3くらいだから、まだお芝居も始めてなくて。
合田 名前は聞いたことあったけど。
稲森 私は何作か観てた。その時の印象は、正直に言いますよ、「私、これ何見てるんやろ?」っていう(笑)。
合田 最高のやつじゃないですか!
稲森 あれ、私、何見てるんやろ?なんでこれ見せられたんやろ?っていうのが、ずっとわからなかったんですよ。それでも終わったあと、心の中にゴロッとしたものが残ってて、そのまま帰りの電車に乗る、みたいな。
合田 ずーっと考えてるんですね。
稲森 でも、いざ出演のお誘いをいただいたら、(返事は)迷わなかった。躊躇しなかったですね。まさか声が掛かると思わなかったし、経験してみたいと思って。
松岡 でも(今回は)これまでの作品より、ずっとわかりやすいですよね?
稲森 うん、もっとワケわかんなかった。
合田長南 え、えー。
稲森 私が一番覚えてるのは、博士が出てきて、後ろ手になんか隠してるんですよ。で、一瞬だけお客さんに(持ってるものを)見せるんですけど、それがコーラで。500mlのコカ・コーラ。でも、コーラはそれから一切出てこないんです。それがずっと気になって。私、なんでさっきコーラ見せられたの?って。(※2006年『ヒメールII』
一同 (笑)

『ヒメールII』(2006年)

松岡 私が覚えてるのは、円形舞台の周りを、殿井さんっていう女優さんが、マラソンランナーの格好でずっと走ってるんですよ。(※2011年『こいのいたみ〜come on! ITAMI〜』
合田 なんで?
稲森 で、たまに犬役が出てくるねんな。
合田 え、で、出てきて何するんですか?
稲森 いや、別に何もせん。何周か走って、殿井さんとどっか行ったんちゃうかな。
合田 ……(半笑いで)何を言うてんすか?
稲森 説明するとそうなっちゃうの(笑)。だから、なんか、振り回されたい人は観に来るといいんじゃないですかね。肩を、ウワー!って揺さぶられたい人とか。
合田 悩んでる人とか?
稲森 悩んでる人?(笑)でも普通、舞台上でやることには意味があると思うじゃないですか。作ってる方も、観てる方も、意味があると思ってるはずですよ。でも、それが全然わからなくなる。だって、稽古場ではあんなに緻密に作ってるのに!っていう。

『こいのいたみ~come on! ITAMI~』(2011年)photo by Toshihiro Shimizu

合田 でも(稽古でも)その片鱗はすでにありますよね。
稲森 もう、大いに煙に巻かれたいですね。
合田 ……「煙に巻きたい」ですよね? こっちが巻く側ですからね。
稲森 そっか、こっちが煙に巻かんといかんのね(笑)。
松岡 「煙に巻く」って表現、すごいわかりやすいですね。
稲森 そういえば邦生さんが、稽古中のダメ出しで、「その間(ま)じゃ、お客さんがあなたのセリフの中を冒険できない」みたいなことを言ってて、ハッとしたんですよ。だから、お客さんには「どういうこと?これは重要なの、重要じゃないの?」って冒険してほしい。
長南 煙に巻きたい、でも冒険してほしいって、矛盾してますけど(笑)。
稲森 いやー、迷わせたいよね。意味とか求めなくても、面白がれるポイントはたくさんあるはずやから。
合田 単純に役者がすごいし。
稲森 そう、笑いをこらえるのがね。我々は笑っちゃいかんよね。
長南 大丈夫なんですかね、本番。
稲森 みんな、稽古場で殴り合いながらバタバタ倒れていく感じやもんね(笑)。
松岡 そこの「頑張ってるアピール」はしたいですよね。私は笑わんようにしてるぞと。

  演出家・杉原邦生の印象

長南 僕は、邦生さんの第一印象と今の印象がだいぶ違って。2013年の京都学生演劇祭で審査員をされてたのが最初だったんですけど、でも僕らの芝居を、邦生さんだけ全く評価してくれなくて。講評で「開始5分で観ようと思わなくなった」って。
合田 うわー。
長南 2回目は、僕の友達が邦生さんの教え子なんですけど、彼が邦生さんからの連絡に返事をしてなかったみたいなことがあって。ある時、彼が邦生さんに「ちょっと来い」って、そのまま連れていかれるという。
合田 怖い怖い怖い。
長南 でもTwitterにはEXILEが好きとか、お祭りとか書いてあるから。
稲森 いや、EXILE好きな人は怖いよ。
合田 ボロカスに怖いですよ。
長南 でも、今では「ちゃんと言ってくれはるな」って。物の言い方は人によって変えるけど、ちゃんと考えを伝えてもらえてる気がする。
稲森 (ダメ出しで)「ダメだよ」って言う時の、言い方が好き。
一同 あー。
稲森 邦生さんの言い方は、「やらなきゃ、がんばろう」って思う。モチベーションを削がれないというか。
合田 人が絶対落ち込まないような言い方をしはりますよね。
長南 僕は(作・演出を兼ねない)純粋な演出家と出会ったのは邦生さんが最初なんですよね。どっちが良い、悪いじゃないけど、でもやっぱり違って。言い方は悪いかもしれないですけど、作・演出だと一種の神様みたいになるし。
合田 まあ、全部を司ってるからね。
長南 邦生さんの場合、「行け!」って送り出した後に、「ごめん、違った、もう一回行け!」みたいな。
合田 (判断が)違った時には「違った」って言ってくれるしね。
松岡 舞台美術もされる方やから、画を作ることから入っていくのかと思ったら、コミュニケーションから作るんですよね。

稲森 私の(邦生さんへの)第一印象は、大学の先輩やけど時期は被ってないから、やっぱりEXILEが好きっていうのが怖くて(笑)。最初は、テンションであれこれ言うんじゃないか、よくわからない言葉を使うんじゃないかってイメージ。でも『やわらかなかぐら』の稽古場に行ったら、丁寧だし、真っ当なことしか言わないし、きちんと、わかりやすく演劇の話をしてくれた。だから、ちゃんとした言葉を使う人なんだと思って。でもM☆3の稽古に入って、またちょっとわからなくなってる。ムチャな言い方をするから(笑)。
一同 (笑)
稲森 でも付き合いが長くなってくると、ちゃんと応えてくれるか、どんな風に返してくれるかが楽しみで、ムチャな言い方をしちゃうって言うてはったし。『かぐら』はお芝居をしたことがない一般の方も一緒だったから、余計に物事を丁寧に伝えてはったと思う。まじめなこと言うと、俳優としてはすごくありがたい。メチャメチャ勉強になってますよ。
長南 ……なんか、面白がられてたいって思います。
稲森 うん、うん。ん? でもそれは自分の劇団の演出家も同じじゃないの?
長南 それはもちろん(笑)。
合田 邦生さんには特に、ってこと?
長南 邦生さんって、自分の団体で俳優を抱えてないじゃないですか。作品ごとに人を集めるスタイルだから、誰かを1から10まで面倒見ることは多分ないんじゃないかなって。だから、邦生さんがチョイスする時の、面白い人でありたいというか。
稲森 うん。何回も一緒にされてる人を見ると、「やっぱりそうなんや!」って思う。(邦生さんは)いろんな人と一緒にやりたいっておっしゃる方じゃないですか。そんな人が、何回も一緒にやりたい人っていうのは……もう「すげえ!」の一言ですよ。
合田 でも、僕はね、(邦生さんが)メチャクチャ怖いです。
長南 今ですか?
合田 今、今。メチャクチャ怖い。
松岡 まあ、ヤンキーですもんね。
合田 いや、違う、どつかれるとかじゃない(笑)。本音が見えないから。
一同 あー。
合田 すごく気を遣ってはるし、めっちゃ優しいのはわかるけど、邦生さんが本音のところで何を思ってるのかわからないのが……。
松岡 初めて演出を受けるから、どこを観察されてるんだ?みたいな感じですよね。
合田 面白いって思われたいとか、そういうのはもちろんあるから。畏怖、恐れですよ。
長南 僕は『かぐら』の時、すごいビビりながら「面白がられたい」って思ってたら、そういうのは全部見透かされてて。背伸びしてもムダやなと思いました。
合田 ハッハッハ(乾いた笑い)。見透かされんのメチャクチャ怖い。
松岡 これから見透かされていくんですかね。
合田 もう見透かされてるんちゃうの。
稲森 うん、もう全部バレてると思うから。
合田 そこまで行ったら楽やね……。だいぶ怖さもなくなると思う。

  今後の稽古、本番への意気込み

稲森 稽古が始まった時には思ってもみなかった場所まで行きたいです。自分の状態もだし、作品もそうだし。舵取りは作家・演出家にお任せして、今は思いっきりやるだけです。思いっきり応えられるように頑張るだけ。
合田 不自然なことを、自然体でできたらいいなと思ってます。それっぽいことや、あんまり意味のないことを。
松岡 いいこと言った! なんか、ちょっと好きになりました(笑)。
稲森 すぐ好きになるやん!
合田 騙す人のヤツや。
長南 お客さんに笑ってもらって、「最高の無駄遣いをした」って思ってほしいです。この時間は何だったんだ?みたいなことを、いい顔で言ってもらいたい。そんな、贅沢な時間にできたらと思います。
松岡 とにかく、お客さんをいっぱい入れたいと思ってます。たくさんの人と時間を共有したい。もっと、京都の演劇界で話題になりたい!
稲森 そうですね。(M☆3は)6年ぶりやしね。
合田 (会場の)立誠小学校もなくなるしね。思えば贅沢な話ですよね、小学校のお芝居を小学校でやれるって。

 

編集|稲垣貴俊

 

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